肺の異常陰影の正体は・・
2025-07-15
30代の男性が高血圧のため受診しました。その時の血圧はなんと238/146!!
これはさすがに「生活習慣の改善から・・」とは言っていられないレベル、急ぎ治療を始める必要があります。合併症の有無も確認するため、採血、心電図、胸部レントゲンなどを行ったところ・・
胸部レントゲンで肺にいくつかの結節影がありました。さらにC Tを撮影してみると、両肺に孤立性結節がいくつか散在しているのがはっきりとわかります。
このような多発性の結節がある場合、転移性の肺癌をまず疑わなければいけません。また、ときとしてクリプトコッカスという真菌感染のこともありますが、主な腫瘍マーカーやクリプトコッカス坑原などは陰性。県立病院の呼吸器内科を紹介したところ、なんと!結核であることが判明し、結核病棟のある病院に入院しました。
結核は過去の病気のように思われますが、今でも決してまれではありません。また肺病変も多彩なパターンを示しますが、今回のような孤立性結節が散在するだけの事例は初めて見ました。
この患者さんは咳などの呼吸器症状はなく発熱もありませんので、今回レントゲン検査をしていなければもっと進行するまで気がつかなかったことでしょう。高血圧をきっかけに放置できない病気が偶然見つかったのはラッキーだったと思います。

気管支内の異物
2025-07-15
検診で胸部のレントゲンを撮影した時に、技師から「(歯から外れた)銀歯を飲み込んだのでは?」と言われた男性が受診しました。
たとえ銀歯を飲み込んでも便と一緒に排出されるはずですが、レントゲンを見ると確かに心臓の左側に金属片らしき影があります。C Tを撮影するとそれは左の気管支内にあるようです。つまり飲み込んだのではなく、本人が気づかないうちに声帯を通過して気管に落ち込んだのでした。
県立病院の呼吸器外科に紹介したところ、無事、内視鏡で摘出することができました(ただし銀歯ではなく金歯でした)。
金歯が外れたのは数ヶ月前とのこと。それだけ長い時間、気管支内に異物があればずっと換気が悪くなり肺炎や肺の虚脱が起こるのが普通ですが、何の症状も見られなかったのはなんとも不思議です。
もし、起床時に歯の詰物が外れているのに気がついたけど見つからない時には、念のためにレントゲンを撮ってもらった方がいいでしょう。

大動脈瘤
2025-02-20
定期的に往診している老人ホームにもうすぐ90才になる男性が入所してきました。高齢になり自宅での生活が困難になったのです。
それまでの主治医からの紹介状にはいくつかの病名と処方が書いてありましたが、その中に「腹部大動脈瘤」との記載があります。動脈瘤は大きくなると破裂・突然死のリスクが高いので、確認のためC Tを撮影すると・・腹部大動脈が直径6cm近くの大きさに拡張しています。
一般的に大動脈瘤は老年期の男女に好発します。加齢や動脈硬化などによって動脈が脆弱になると、血管内からの圧力によって動脈壁が次第に進展してまるで風船みたいに拡張してしまうのです。動脈瘤の直径が5〜6cmを超える場合や、一年間に4mm以上の急激な拡大がみられる場合には破裂する危険が高く、手術によって人工血管に置換することが通常なので血管外科を紹介しましたが、すでに自立生活が困難となり老人ホームで介助を受けている現状を考慮して経過観察となりました。
このままなんとか穏便に老衰死を迎えてくれればありがたいと思います。

食欲不振の原因は夏バテではなかった
2022-09-07
この夏に食欲が低下していた男性。周りから心配されて「一度検査をした方がいい」と言われていましたが、仕事が忙しく身体の事は後回しにしていました。ここ数日は吐き気もして身体がきつくなり、ようやくクリニックを受診しました。「おそらく熱中症だと思うので点滴して欲しい」と本人は言いますが、異様に腹部が膨満しています。キーパーソンの勧めもあって検査を受ける気になり、CTを撮影したところ、腸内に大量のガスと残渣物が停滞して腸閉塞の状態になっています。その原因は大きくなった直腸癌(◯印)でした。

頭痛の原因は?
2022-07-29

頭痛の原因で意外と多いのが副鼻腔炎です。本来は空気が存在する副鼻腔に膿汁が溜まり炎症を起こすため、特に前額部(おでこ)や目・鼻の周囲、頬の辺りなどに痛みが生じます。通常は抗生剤などで治療しますが、治りにくい事例の中には真菌が原因のこともあります。副鼻腔炎は耳鼻咽喉科領域の疾患ですが、頭痛の検査で行ったC Tでもよく見つかります。
また体力が低下したときに起こりやすいので、食事や休養などを見直すことが肝心です。
写真の解説
副鼻腔に膿汁が溜まった(矢印)C T画像。健康なときには空気があるので黒く見える。
