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貧血の話

巨赤芽球性貧血

2022-09-30
巨赤芽球性貧血とは骨髄中の赤芽球が大きくなるので付けられた名前です。
赤芽球核の成熟に必要なビタミンB12や葉酸が不足するため、赤血球の造血がうまくいかなくなり成熟した赤血球が減少します(この状態を「無効造血」と言います)。顕微鏡で観察すると骨髄中には核が未熟で大きい赤芽球が増えており、血液の中にも大きく楕円状の赤血球が見られます。
 
原因
偏食・アルコール中毒・妊娠(主に葉酸欠乏)や胃切除後や萎縮性胃炎、小腸病変などによる吸収障害があります。また胃を切除していなくてもビタミンB 12の吸収に必要な内因子に対する抗体の存在が原因となる場合もあり、「悪性貧血」と呼ばれています。
 
特徴的な症状
巨赤芽球性貧血では、一般的な貧血の症状以外にビタミンB12欠乏に特有な粘膜障害や精神・神経症状などが見られます。たとえば舌苔が消失して舌がテカテカになり、口角が炎症を起こすことがあります。またしばしば悪夢にうなされることや妄想が生じることもあります。もう昔の事ですが、高度な貧血のため入院したビタミンB12欠乏の患者さんが夜中に「火事だ〜!火事だ〜!」と大きな声で叫び、病棟中が大騒ぎになったことがありました。
 
治療
欠乏しているビタミンB12や葉酸を補充します。葉酸欠乏の場合はほぼ経口剤で対応できますが、ビタミンB12欠乏は胃・小腸病変によって起こる事が大半で、この場合は注射製剤を使用します。補充によって貧血は改善しますが、ビタミンB12や葉酸欠乏の原因が何であるのかを確認することが大切です。
 
食べるべき食材
ビタミンB12を多く含む食材は、肉 魚 乳製品などです。
完全なベジタリアンであればサプリメントなどで補充しなければビタミンB12欠乏になりますが、普通の食生活で簡単に欠乏することはありません。欠乏する原因の多くは胃や小腸の疾患によるものです。
葉酸を多く含む食材は、果物 野菜 肉 レバー(レバーは鉄分だけでなく葉酸も豊富に含んでいます)などが挙げられます。長時間の加熱により葉酸の生物活性は低下してしまいます。偏食による葉酸欠乏は結構多いようです。

鉄欠乏性貧血

2022-09-04
鉄欠乏性貧血とはヘモグロビン合成に必要な体内の鉄が不足することによって、起こる貧血です。赤血球の数は減少しませんが、1個1個の赤血球は小さくなります(小球性低色素性貧血)。
 
鉄が欠乏すると、次のような症状が起こります。
  • 貧血になる
  • 爪が変形する(さじ状爪)
  • 粘膜が障害される(舌炎、口角炎、食道粘膜萎縮による嚥下痛:プランマー・ビンソン症候群)
  • 味覚がおかしくなる(冷たい氷をかじる、クレヨンを食べる)
 
鉄欠乏の要因は2とおり
  • 鉄の摂取が不足している
  • 鉄の需要・消費が過剰である
 その原因は
 成長、過剰な運動・労働、過多月経、妊娠・出産・授乳、
 消化管の潰瘍・癌、痔、子宮筋腫・内膜症・癌、鉤虫症 など
 
鉄欠乏の原因は運動や妊娠・出産、消化管や子宮からの慢性出血などによる鉄需要増加によるものが多いとされており、看護学校の教科書にも「極端な偏食や鉄の吸収不全を除いて、鉄の供給不足が生じることはまれである」と記載されていますが、現実は違います。最近では朝食抜きや、食べてもトーストとコーヒーだけで昼食もコンビニのおにぎり、というような食生活をしている人が多いのです。このことは患者さんを診療しながら、毎日の食生活を詳しく聞くとわかります。
また鉄の供給不足が原因のときは鉄剤を内服してすぐにヘモグロビン値が上昇し、需要が増加しているときはヘモグロビンの上昇ペースは遅いのですが、私の経験上は鉄剤内服後すぐにヘモグロビン値が改善する患者さんの方がずっと多いのです。
 
鉄欠乏性貧血の治療
治療の原則は鉄剤の内服です。緑茶は鉄の吸収を阻害するので同じタイミングで飲まないようにして下さい。胃痛や吐き気などの副作用が強く内服できないときには鉄剤の静脈内注射を行います。
ヘモグロビンが正常化しても体内の鉄分はまだ不足していますので、フェリチン値が正常になるまで鉄剤は継続します。逆に過剰に投与すると肝機能悪化などを招くので、必ずフェリチン値を確認しなければいけません。
また鉄欠乏性貧血は鉄剤を投与すれば改善しますが、やはり潰瘍や癌などの基礎疾患についても確認する必要があります。
 
誤診しやすい貧血
鉄欠乏性貧血以外にも小球性となる貧血があります。結核などの慢性炎症や腫瘍による貧血でも同じように血清鉄が減少しますが、肝臓など体内の組織中の鉄分は増加します。これに間違って鉄剤を投与してはいけません。

いろいろなタイプの貧血がある

2022-09-01
貧血は血液中のヘモグロビンが減少した状態であり、その原因はさまざまです。
貧血の原因によって治療法も異なりますので、正確に診断しなければいけません。
 
ヘモグロビンが減少する原因を大きく2つに分けると
1.赤血球数はあるが、ヘモグロビンの合成がうまくいかない
この場合の多くは鉄代謝の異常によるもの(鉄欠乏性貧血、慢性炎症に伴う貧血など)や、まれに先天的なヘモグロビン構造の異常による貧血(サラセミア)があります。
2.ヘモグロビンが存在する赤血球の数が減少している       
この場合は、赤血球の造血がうまくいかない(造血障害、無効造血)ものと、赤血球はできるがその寿命が短くなる(溶血、失血)ために赤血球数が減少するものがあります。主なところをまとめると、
赤血球の寿命が短くなるものとして・・
失血(身体の外に血液が失われる)
溶血(身体の中で赤血球が壊れる)
 血管外溶血(主に脾臓で赤血球が処分される)
 血管内溶血(血管内で赤血球が破壊される)
赤血球の供給が減るものとして・・
 血液幹細胞の異常(再生不良性貧血など)
 造血の場が減少(腫瘍細胞の骨髄への浸潤、骨髄線維症など)
 赤血球核の成熟不良(ビタミンB12、葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血)
  
栄養素の不足によって起こる貧血
ビタミン12と葉酸は赤血球の分化・成熟過程において赤芽球核の成熟、鉄はヘモグロビンの合成に必須なので、これらの栄養素が欠乏すると貧血になります。
 
それぞれの貧血に特有な症状
全ての貧血に共通する、倦怠感・易疲労感・頭痛・めまい・失神・顔色不良・狭心症・動悸・息切れなどの症状に加えて、それぞれの貧血の原因によって特有な症状がみられます。
主なところを紹介すると・・
鉄欠乏性貧血・・粘膜症状、味覚障害、さじ状爪
巨赤芽球性貧血・・神経・精神症状、粘膜障害、舌苔の消失
再生不良性貧血・・易感染性、出血症状
溶血性貧血・・黄疸、ヘモグロビン尿   
 
*貧血の患者さんを診療するときには、血液のデータだけではなく身体所見をよく観察する事が大切なのです。

貧血とは

2022-08-25
貧血の定義
 貧血とは「赤血球中のヘモグロビンが減少し酸素の運搬能力が低下した」状態であって、1つの病気ではありません。ほとんどの場合は赤血球も減少しますが、厳密にはヘモグロビンの濃度によって貧血の有無が決まります。
 ヘモグロビンは赤血球の中に存在するタンパク質で、このヘモグロビンに接着した酸素が赤血球によって身体中の細胞に届けられます。したがって貧血になると酸欠による症状が起こるのです。
 
ヘモグロビン値は年齢・性別によって変化する
 貧血の診断をするときには、ヘモグロビンの濃度が年齢・性別によって変化することを考慮しなければいけません。造血能が衰える高齢者ではヘモグロビン濃度も低下します。妊娠中は循環血漿量が増加するので相対的にヘモグロビン濃度は低くなります。
ヘモグロビンの下限基準
  • 成人男性                     13 g/dl
  • 成人女性                     12 g/dl
  • 思春期前小児          11 g/dl
  • 80才以上            11 g/dl
  • 妊娠 前期・後期             11 g/dl
  • 妊娠 中期            10.5 g/dl
 
貧血の症状
 貧血の症状といえば、めまいや息切れなどを思いつく人が多いのではないでしょうか。もちろんそのような症状も起こりますが、それはかなり進行してからです。最も早く起こるのは酸素の需要が多い運動時の疲労感やだるさです。そして貧血が進行するにつれて頭痛やめまい、失神なども出現し、顔色も青ざめてきます。眼球結膜は白っぽくなります。
 ただし「疲れやすくてだるい」という訴えをする患者さんは毎日のように受診します。その原因が常に貧血とは限りません。心臓や肺、肝臓、腎臓など他の臓器の疾患でも同じような症状が起こります。ひょっとしたら精神的にうつ状態なのかもしれません。肉体的問題で「だるい」のか精神的な要因で「だるい」のかを見分けるポイントは、貧血や心臓疾患など身体が悪いときは運動負荷が大きいほど症状がひどくなりますが、精神的なケースでは運動との関係がはっきりせず、むしろ何もしないでジッとしているときの方がだるく身体を動かすと調子良くなる事もあります。
 貧血があるのかどうかは採血をすればすぐにわかります。
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